言葉の壁、文化の違い、そして見えない相手への不安。新人時代、私も同じ壁にぶつかり、成果の出ない日々に頭を抱えました。「テレアポコツ」と検索しても、国内向けの情報ばかりで、海外特有の悩みに寄り添う答えは見つかりませんでした。本記事では、海外展開の現場で培った経験を基に、特に新人がつまずきやすいポイントを解消し、成果に繋げるための具体的なテレアポのコツを、事前準備から実践的な会話術、そしてCRM活用法まで体系的に解説します。この記事を読めば、あなたも自信を持って海外の顧客との最初の対話に臨めるようになります。
目次
▌テレアポとは?~海外営業で成功するアプローチ
1.テレアポとはなにか?海外営業での役割と違い
まず、テレアポとは何か、その本質を再確認しましょう。テレアポは単にアポイントを取る作業ではありません。それは、未来の顧客との最初の接点を築き、信頼関係の第一歩を刻む戦略的コミュニケーションです。
特に海外営業において、この役割はさらに重要になります。物理的な距離がある分、一度の対話の質がビジネスの成否を大きく左右するからです。
ただし、日本と海外ではアプローチの主流が異なります。日本ではテレアポがアウトバウンド営業の代表格ですが、欧米のB2B市場では「コールドメール」がより一般的に活用される傾向にあります。そのため、テレアポを単独の施策と捉えず、メールなど他のチャネルと組み合わせた複合的なアプローチが成功の鍵となります。
2. 新人が悩みがちな壁と解決法
海外テレアポで新人が直面する壁は、国内営業とは質が異なります。
言語の壁: 「完璧な英語で話さなければ」というプレッシャー。しかし、大切なのは流暢さよりも、伝えたい要点を明確かつ簡潔に話すことです。
文化・商習慣の壁: 挨拶の仕方、本題に入るタイミング、時間に対する感覚など、国や地域によってビジネスマナーは様々です。これを知らないと、無意識に相手を不快にさせてしまう可能性があります。
心理的な壁: 顔が見えない相手、しかも海外の担当者にかける電話は、断られることへの恐怖を増幅させます。B2Bのコールドコールの平均成功率は2.3%というデータもあり、断られるのが当たり前という心構えが不可欠です。
権威性の担保: Cognism社の「2025 State of Cold Calling Report」によると、B2Bにおけるコールドコールの平均成功率は2.3%とされています。この数値を念頭に置き、1回の失敗で落ち込むのではなく、確率論として捉え、試行回数を重ねることが重要です。
これらの壁を乗り越えるには、精神論だけでは不十分です。これから解説する具体的なテレアポ営業の技術と、それを支える事前準備が不可欠となります。
▌テレアポのコツ:海外取引先との架け橋となる話法・トーク力
1. テレアポ上手い人の会話術・普遍の特徴
国や文化を問わず、テレアポ上手い人には共通する特徴があります。それは、「売り込む」のではなく「対話し、課題を引き出す」姿勢です。
✅落ち着いたトーンで、ゆっくりと話す: 自信と信頼感を演出します。早口や高すぎる声は、相手に警戒心を与えがちです。
✅相手に話させる: 一方的に話すのではなく、「〇〇について、現状はいかがですか?」など、相手が考えを述べられるような質問を投げかけます。
✅メリットを簡潔に提示: 長々とした商品説明は不要です。「弊社の〇〇は、貴社の△△という課題を解決し、□□というメリットをもたらします」のように、相手にとっての価値を端的に伝えます。
2. 初対面でも印象に残す自己紹介・導入トーク
最初の10秒が勝負です。ここで相手に「話を聞く価値がある」と思わせなければなりません。
▼悪い例:
「お忙しいところ恐れ入ります。私、株式会社〇〇の△△と申します。弊社は…」 → 相手は誰かもわからず、売り込みだと身構えてしまいます。
▼良い例:
"Hello, [Prospect's Name]. My name is [Your Name] from [Your Company]. I'm calling because I saw your recent post on LinkedIn about expanding into the Asian market, and I have an idea that could help you accelerate that process. Do you have 30 seconds?" (こんにちは、[相手の名前]さん。私は[会社名]の[自分の名前]です。LinkedInでアジア市場への展開に関する最近の投稿を拝見し、そのプロセスを加速できるアイデアがありお電話しました。30秒ほどよろしいでしょうか?)
ポイントは、①相手をリサーチしたこと、②電話の目的、③相手への敬意(時間を尋ねる)を明確に伝えることです。
3. 断られたときのリカバリー術
断られても、即座に電話を切ってはいけません。断りの理由によって、次の一手が変わります。
断りの種類 | 背景の推測 | リカバリー術の例 |
---|---|---|
「今は忙しい」 | タイミングが悪いだけ。ニーズはある可能性がある。 | 「承知いたしました。差し支えなければ、改めてご連絡させていただくのにご都合の良い曜日や時間帯はございますか?」 |
「興味がない」 | メリットが伝わっていないか、本当にニーズがない。 | 「さようでございますか。ちなみに、現在〇〇の分野で何か課題に感じていらっしゃることはございませんか?」と、軽く探りを入れる。深追いはしない。 |
「すでに他社を使っている」 | 乗り換えのチャンスがあるかもしれない。 | 「左様でしたか。参考までに、現状のサービスでご満足されている点、あるいは改善したい点などお聞かせいただけますでしょうか?」 |
重要なのは、どんな場合でも礼儀正しく、しつこい印象を与えずに引き下がることです。丁寧な対応が、将来のチャンスに繋がります。
▌テレアポを支える事前準備――B2Bならではのリサーチ&シナリオ策定
1. 取引先情報・文化・ビジネスマナーをどう収集するか
海外テレアポの成否は、8割が事前準備で決まるといっても過言ではありません。
✅企業情報:
公式ウェブサイト: 事業内容、IR情報、プレスリリースは必読。
LinkedIn: 企業の公式ページと、担当者個人のプロフィールを確認。役職、経歴、最近の活動から、パーソナルな接点を探ります。
✅文化・ビジネスマナー:
JETRO(日本貿易振興機構)の国・地域別情報: 各国の基本的なビジネス慣習がまとめられており、信頼性が高いです。
専門ブログや書籍: 「[国名] business culture」などで検索し、より実践的な情報を収集します。例えば、ドイツでは直接的でロジカルな表現が好まれ、中東では人間関係の構築が重視されるなど、アプローチを最適化します。
2. 新人が陥りやすい準備不足とその対策
準備段階で新人が陥りがちなのは、「何をどこまで調べれば良いかわからない」という状態です。対策として、チェックリストを作成することをお勧めします。
ターゲット企業の事業内容と主要サービス
最近のニュースやプレスリリース
担当者の氏名、役職、LinkedInプロフィール
ターゲット国の祝日と一般的な就業時間
その国の基本的なビジネスマナー(挨拶、時間厳守の度合いなど)
3. CRMを活用したテレアポ業務効率化の実践例
顧客事例:株式会社リリーフ様のケース
総合片付けサービスおよび海外でのリユース事業を展開する同社は、CRM/SFAの導入前、加盟店の活動情報が不透明で、報告書作成の負担が大きいという課題を抱えていました。
CRM導入後の変化: CRMを導入したことで、各加盟店の営業活動や顧客情報がリアルタイムで一元管理できるようになりました。これにより、本社は海外拠点を含む全体の状況を正確に把握し、データに基づいた的確なサポートを提供できるように。結果として、業務の透明性と効率性が大幅に向上しました。
この事例が示すように、CRMはテレアポ担当者にとって強力な武器となります。
情報の一元化: 過去のコンタクト履歴、担当者情報、商談の進捗、その国の文化に関する注意点などを、誰でも一目で確認できます。これにより、担当者が変わってもスムーズな引き継ぎが可能です。
効率的なリスト管理: ターゲット国、業種、企業規模などで顧客リストをセグメント化し、優先順位をつけてアプローチできます。
トリガーマーケティングの実践: 「ウェブサイトの料金ページを閲覧した」「特定の資料をダウンロードした」といった顧客の行動(トリガー)を検知し、最適なタイミングでフォローコールのタスクを自動生成することも可能です。
このように、CRMは単なる情報管理ツールではなく、テレアポコツを組織的に実践し、成果を最大化するための戦略的プラットフォームなのです。
▌テレアポと海外営業成果――案件獲得から信頼構築までの流れ
1. アポイント獲得後の商談展開法
アポイント獲得はゴールではなく、スタートです。獲得した商談を成功に導くためには、テレアポで得た情報を最大限に活用します。
情報の引き継ぎ: テレアポでヒアリングした相手の課題、関心事、担当者の人柄などをCRMに詳細に記録し、商談担当者へ正確に引き継ぎます。
パーソナライズされた提案: 引き継がれた情報を基に、相手の課題に的を絞った提案資料を準備します。これにより、「私たちのことをよく理解してくれている」という信頼感が生まれます。
次への繋がり: 商談の最後には、必ず次のアクション(見積もり提出、再度のミーティングなど)を明確にし、双方で合意します。
2. 成果の可視化、振り返り、スキルアップの方法
感覚的な反省ではなく、データに基づいた振り返りが成長を加速させます。CRMを活用し、以下のKPI(重要業績評価指標)を定点観測しましょう。
KPI項目 | 説明 | 改善のアクション例 |
---|---|---|
コール数 | 一定期間に行った架電の総数。 | CTI(電話統合システム)連携でワンクリック発信を導入し、架電効率を上げる。 |
コンタクト率 | コール数のうち、担当者と会話できた割合。 | 繋がりやすい曜日や時間帯を分析し、架電タイミングを最適化する。 |
アポイント獲得率 | コンタクト数のうち、アポイントに繋がった割合。 | トークスクリプトや切り返し話法を見直す。通話録音を聞き返し、改善点を探す。 |
案件化率・受注率 | 獲得したアポイントから、実際の案件や受注に繋がった割合。 | ターゲットリストの精度を見直す。より質の高いリードへのアプローチを強化する。 |
これらのデータをチームで共有し、成功事例(うまくいったトークなど)を横展開することで、組織全体のスキルアップに繋がります。
▌よくある質問(FAQ)
Q1. 海外へ電話するのに最適な時間帯は?
相手の現地時間の午前10時~11時半、または午後2時~4時が一般的ですが、国によって異なります。まずはこの時間帯を試しつつ、CRMに記録して自社にとってのゴールデンタイムを見つけましょう。時差の計算ミスを防ぐため、CRMのタイムゾーン表示機能などを活用するのが確実です。
Q2. 電話とメール、どちらが効果的ですか?
組み合わせが最も効果的です。特に欧米では、まずパーソナライズされたメールで接点を持ち、そのフォローアップとして電話をかける手法が一般的です。複数のチャネルで接触することで、相手の記憶に残りやすくなります。
Q3. 何回かけても繋がらない場合、諦めるべきですか?
1、2回で諦めるのは早すぎます。ある調査では、リードとの会話成立には平均3回の試行が必要というデータもあります。ただし、むやみにかけ続けるのではなく、5〜6回試しても繋がらなければ、一度リストから外し、数ヶ月後に再アプローチするなどルールを決めましょう。
Q4. 英語に自信がありません。どうすれば良いですか?
完璧を目指す必要はありません。伝えたい要点をまとめたスクリプトを準備し、何度も音読練習しましょう。重要なのは、自信を持って、はっきりと話すことです。もし聞き取れなかった場合は、"Could you please repeat that?"と正直に聞き返して問題ありません。
Q5. 決裁者に繋がりません。どうすれば良いですか?
最初から決裁者(意思決定者)に繋がるとは限りません。まずは受付や担当者に、丁寧な言葉遣いで「〇〇の件で情報提供をさせていただきたいのですが、ご担当の部署またはご担当者様にお繋ぎいただけますでしょうか」と目的を伝え、協力を仰ぎましょう。
▌まとめ:新人からプロへの道~海外展開の現場から
海外展開におけるテレアポは、確かに多くの困難を伴います。しかし、本記事で紹介したテレアポのコツ――すなわち、徹底した事前準備、相手に寄り添う対話術、そしてデータを活用した継続的な改善――を実践することで、その壁は必ず乗り越えられます。
特に、新人が一人で全てを抱え込む必要はありません。属人的な努力に頼るのではなく、CRMのようなテクノロジーを活用することで、組織全体で効率的かつ戦略的に海外市場にアプローチすることが可能です。
顧客情報、文化、商習慣、過去のコンタクト履歴。これら全ての情報を一元管理し、次の最適な一手を導き出してくれるB2B海外ビジネス特化型CRMは、あなたの最も頼れるパートナーとなるでしょう。ツールを最大限に活用し、あなたも海外営業のプロフェッショナルへの第一歩を踏み出してください。