CAC(顧客獲得単価)とは?定義や計算方法、LTVとの関係を基礎から解説
   |    2025-08-18

ビジネスの成長戦略を語る上で、「CAC(顧客獲得単価)」は避けて通れない重要な指標です。特にSaaSやサブスクリプションモデルのビジネスでは、事業の健全性を測る生命線とも言えます。 しかし、「CPAと何が違うの?」「どうやって計算すればいいの?」「LTVとの関係は?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。 

この記事では、プロの視点からCACとは何かを徹底的に解説します。計算方法からLTVとの関係性、具体的な改善策まで、ビジネスの成長を加速させるための知識を網羅的にご紹介します。

CAC(顧客獲得単価)とは?計算方法も重要

1.CACとは?

CACとは、「Customer Acquisition Cost」の頭文字をとったマーケティング用語です。顧客獲得するためにかかったコストを表す指標で、新規顧客を1人獲得するためにかかったコストの総額を示します。日本語では「顧客獲得単価」や「顧客獲得コスト」と呼ばれます。

このコストには、以下のような、新規顧客を獲得するために費やされた全ての費用が含まれます。

  • 広告宣伝費(Web広告、雑誌広告など)

  • マーケティング・営業担当者の人件費や賞与

  • セミナーやイベントの開催費用

  • 代理店への手数料

  • コンテンツ制作費やツールの利用料

CACを正確に把握することで、マーケティングや営業活動の費用対効果を可視化し、事業の収益性を客観的に評価できます。

2.CPAとの違いは?

CACとよく似た指標にCPA(Cost Per Acquisition)があります。CPAは、広告キャンペーンなど特定の施策において「1件のコンバージョン(例:資料請求、無料トライアル登録)」を獲得するためにかかったコストを指します。

一方、CACは人件費なども含めた事業全体の「顧客化」にかかったコストを測る、より広範な指標です。つまり、指標の次元は異なります。1回のマーケティング活動において、CPAと同様に重要な指標には、CPM(広告が1000回表示されるごとに発生する費用)、CPC(広告のクリック1件を獲得するのにかかった費用)、ROI(投資収益率)、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)などがあります。

3.CACの種類

CACは、顧客の獲得経路によって3つの種類に分けられます。これらを区別することで、より詳細な分析が可能になります。

種類内容特徴含まれるコストの例
Organic CACSEO(自然検索)やSNS、口コミなど、有料広告以外による顧客の獲得コスト一般的にPaid CACより安価になる傾向があります。Webページの運用
SNS運用
ウェビナー・セミナー
Paid CAC広告/販促費用をかけた時の顧客獲得コスト各マーケティング施策の効果測定に役立ちます。広告媒体への出稿
展示会の出展
有料ツールの使用
Blended CACPaid CACとOrganic CACを合算した、事業全体の総合的な顧客獲得コスト。一般的に「CAC」と言う場合、このBlended CACを指すことが多いです。上記2つの合計値

事業全体の健全性を評価するにはBlended CACが重要ですが、戦略を練る上では、チャネルごとのPaid CACやOrganic CACを個別に分析することが不可欠です。

4.CACの計算方法

CACの計算方法は非常にシンプルです。特定の期間(月、四半期、年間など)を設定し、以下の式で算出します。

CAC = 新規顧客獲得にかかった総費用 ÷ その期間で獲得した新規顧客数

【計算例】 ある月に、マーケティングと営業活動に合計100万円のコストをかけ、50人の新規顧客を獲得したとします。

  • 総費用: 1,000,000円

  • 新規顧客数: 50人

この場合のCACは以下のようになります。

1,000,000円 ÷ 50人 = 20,000円

つまり、この月のCACは20,000円となります。

CAC・LTV・ユニットエコノミクスの関係

CACを単体で評価しても、その金額が高いか低いかを判断するのは困難です。CACの真価は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)と合わせて見ることで発揮されます。

LTVとは、1人の顧客が取引を開始してから終了するまでの期間に、企業にもたらす利益の総額を指します。

そして、このLTVとCACのバランスを見るための指標が「ユニットエコノミクス」です。

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

ユニットエコノミクスは「顧客1人あたりの採算性」を示し、事業の健全性を判断するための非常に重要な指標です。

  • ユニットエコノミクス > 1: 顧客獲得コスト(CAC)よりも、その顧客から得られる利益(LTV)の方が大きい状態。事業は黒字です。

  • ユニットエコノミクス < 1: 顧客を獲得すればするほど赤字が増える危険な状態。早急な事業モデルの見直しが必要です。

一般的に、SaaSビジネスなどではユニットエコノミクスが「3」以上であることが健全な状態の目安とされています。つまり、LTVがCACの3倍以上あるのが理想です。この比率が3を大きく下回る場合は、収益性を改善する必要があります。逆に、3を大幅に上回る場合(例:10以上)は、マーケティングへの投資が保守的すぎ、さらなる成長の機会を逃している可能性も考えられます。

CACを改善する方法5選

ユニットエコノミクスを健全に保つためには、LTVを向上させるか、CACを抑制する必要があります。ここでは、CACを改善するための具体的な方法を5つ紹介します。

1.費用対効果の高いチャネルに集中する

各マーケティングチャネル(広告、SEO、SNSなど)のCACを個別に算出し、費用対効果が最も高いチャネルに予算やリソースを集中させます。効果の薄いチャネルから撤退することも重要な判断です。

2.CVR(コンバージョン率)を向上させる

Webサイトの訪問者が顧客になる割合(CVR)を高めることで、同じ広告費でもより多くの顧客を獲得でき、結果的にCACが下がります。

  • ランディングページの最適化(LPO)

  • WebサイトのUI/UX改善

  • 入力フォームの簡略化

3.コンテンツマーケティングとSEOを強化する

質の高いブログ記事や導入事例などのコンテンツを作成し、SEO対策を行うことで、広告費をかけずに自然検索からの流入(オーガニック流入)を増やすことができます。これはOrganic CACの改善に直結し、長期的に安定した顧客獲得基盤を築きます。

4.MA・CRM/SFAツールを活用する

マーケティングオートメーション(MA)や顧客管理システム(CRM/SFA)を導入することで、見込み客の育成や営業活動を効率化できます。これにより、人的コストを削減し、成約率の高い見込み客にアプローチできるようになるため、CACの改善に繋がります。

5.ターゲット顧客を明確にする

自社の製品やサービスを最も必要としているペルソナ(理想の顧客像)を明確に定義し、そのターゲットに響くメッセージを発信します。これにより、無駄な広告費を削減し、質の高い見込み客を集めることができます。

まとめ

CAC(顧客獲得単価)は、ビジネスの成長性と収益性を測るための根幹となる指標です。

  • CACは、新規顧客1人を獲得するための総コスト。

  • 計算方法は「総コスト ÷ 新規顧客数」。

  • LTVとの比率であるユニットエコノミクス(LTV ÷ CAC > 3が目安)で事業の健全性を判断する。

  • CACの改善には、チャネルの最適化、CVR向上、ツールの活用などが有効。

CACを正しく理解し、継続的に測定・改善していくことが、持続可能なビジネス成長の鍵となります。まずは自社のCACを算出し、現状を把握することから始めましょう。

前の記事: 新規顧客獲得コストの高騰時代、成長の鍵は「顧客維持」にあり

次の記事: ビジネスメール詐欺(BEC)とは?最新手口と実例、企業が講じるべき鉄壁の対策を完全解説

関連記事