市場競争の激化により、多くの企業が「新規顧客の獲得」に課題を感じているのではないでしょうか?このような時代に、持続的な事業成長の鍵を握るのがLTV(顧客生涯価値)です。
この記事では、「LTVの価値を認識することはマーケティングにおいてなぜ重要なのか?」という基本から、具体的な計算方法、売上を飛躍させるLTVを向上させるための具体的な施策、そして施策実行を強力に後押しするCRMの活用法まで、一気通貫で解説します。この記事を読めば、LTVを軸とした新しいマーケティング戦略の全体像を掴み、明日からのアクションに繋げることができます。
LTVとは?顧客生涯価値の基本を理解する
1.LTVの意味と重要視される理由
LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)は、日本語で「顧客生涯価値」と訳され、一人の顧客が自社との取引を開始してから終了するまでの全期間にわたって、企業にもたらす利益の総額を示す指標です。一度きりの売上ではなく、リピート購入や長期的な関係性を含めた、顧客一人ひとりの価値を可視化します。
では、なぜ今、多くの企業がLTVを重要視しているのでしょうか。その背景には、現代の市場環境における3つの大きな変化があります。
新規顧客獲得コストの高騰: 少子高齢化や市場の飽和により、新たな顧客を見つけることが年々難しくなっています。その結果、広告費などの顧客獲得単価(CAC)は上昇傾向にあり、新規顧客だけに頼るビジネスモデルは収益を圧迫しがちです。
サブスクリプションビジネスの普及: SaaSや動画配信サービスなど、月額課金でサービスを提供する「サブスクリプションモデル」が主流となりました。このモデルでは、顧客にいかに長く継続利用してもらうかが収益に直結するため、LTVは事業の健全性を測る生命線ともいえる指標です。
One to Oneマーケティングへの移行: 消費者のニーズが多様化した現代では、画一的なマスマーケティングの効果が薄れています。顧客一人ひとりの嗜好や行動に合わせてアプローチする「One to Oneマーケティング」が求められており、その戦略立案において、個々の顧客価値を測るLTVが不可欠な役割を果たします。
2. LTVの計算方法
LTVの計算方法は複数存在し、ビジネスモデルや分析したい目的に応じて使い分けることが重要です。ここでは代表的な計算式を4つのパターンに分けて紹介します。
ビジネスモデル | 主な計算式 | 特徴 |
全般(簡易) |
| LTVの概念を直感的に理解しやすい基本的な式。 |
利益ベース |
| 売上ではなく、実際の利益ベースで価値を測るための式。 |
コスト考慮 |
| マーケティング投資のROIをより正確に評価するための式。 |
サブスクリプション |
| 顧客の継続性が収益に直結するビジネスモデルに適した式。 |
3. LTV関連の重要指標
LTVをより深く理解し、戦略に活かすためには、関連する指標も把握しておく必要があります。
指標名 | 意味 | 計算式 |
CAC(顧客獲得単価) | 新規顧客1人を獲得するためにかかったコスト |
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ARPA(アカウントあたり平均売上) | 1アカウントあたりの平均的な売上 |
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Churn Rate(解約率) | 一定期間内にサービスを解約した顧客の割合 |
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Retention Rate(顧客維持率) | 顧客がサービスを継続利用している割合 |
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特にサブスクリプションビジネスにおいては、事業の健全性を示すユニットエコノミクスとして「LTV ÷ CAC ≧ 3」がひとつの目安とされています。
関連記事:CAC(顧客獲得単価)とは?定義や計算方法、LTVとの関係をを基礎から解説
なぜLTVを向上させることで売上が上がるのか?
LTVの概念を理解したところで、次に「なぜLTVを向上させることが、直接的に売上増に繋がるのか」というロジックを深掘りしましょう。
企業の売上は、突き詰めると以下のシンプルな方程式で表せます。
売上 = 客数 × 成約率 × 客単価 × リピート(継続)率
このうち、LTV向上の施策は、主に「客単価」と「リピート(継続)率」という2つの要素に直接作用します。つまり、既存顧客がより高額な商品を、より頻繁に、より長く購入してくれる状態を目指すのがLTVマーケティングの本質です。
なぜ新規顧客獲得(客数)ではなく、既存顧客との関係深化(客単価・リピート率)が重要なのでしょうか。その答えは、現代の厳しい市場環境にあります。
マーケティングには「1:5の法則」という有名な経験則があります。これは、新規顧客を獲得するためにかかるコストが、既存顧客を維持するコストの5倍にものぼることを示しています。NECソリューションイノベータをはじめとする多くの専門機関がこの法則の重要性に言及しており、現代の市場において、いかに既存顧客との関係を深めることが費用対効果の高い戦略であるかを物語っています。さらに、顧客離脱率を5%改善するだけで利益が25%も改善するという「5:25の法則」も存在し、LTV向上に向けた顧客維持の取り組みが、いかに事業インパクトが大きいかを示唆しています。
つまり、青天井にコストがかさむ新規顧客獲得に奔走するよりも、すでに自社との関係性がある既存顧客の満足度を高め、一人ひとりから得られる生涯価値(LTV)を高めることこそが、最も効率的かつ持続可能な売上成長戦略なのです。
LTVを最大化する5つのコツ
LTVを最大化するためには、以下の5つの具体的なアプローチが重要です。
1. 顧客単価を上げる(アップセル・クロスセル)
アップセル: 顧客が検討している商品よりも高価格帯の上位モデルや、より機能が充実した上位プランを提案します。
クロスセル: 購入商品に関連するアイテムを「合わせ買い」として提案します。
価格設定の工夫: 「松・竹・梅」のパターンを活用することで顧客単価を引き上げます。
2. 購買頻度を高める(リピート促進)
定期的な情報発信: メールやLINEを活用した情報配信で顧客との接点を維持します。
ロイヤルティプログラム: ポイント制度や会員ランク制度でリピート購入を促します。
購買サイクルの把握: 購入周期を分析し、的確なタイミングでのアプローチを行います。
3. 継続期間を延ばす(解約率低減)
カスタマーサクセスの導入: 顧客が製品を最大限活用できるよう能動的に支援します。
顧客コミュニティの運営: 情報交換やエンゲージメントを深める場を提供します。
4. 顧客体験(CX)を向上させる(満足度・ロイヤルティ向上)
パーソナライズされたコミュニケーション: 個別にカスタマイズされたメッセージを配信します。
手厚いアフターサポート: 購入後のサポート体験を充実させます。
5. 顧客獲得・維持コストを最適化する
優良顧客へのターゲティング: LTVが高い顧客層を分析し、類似ターゲットへアプローチします。
リファラル制度の導入: 紹介経由での顧客獲得を促進します。
LTV向上を支援する最強ツール:CRMとは
ここまで解説してきた5つのコツを、人力だけで実行しようとすると膨大な手間と時間がかかります。特に「顧客を理解し、パーソナライズされたアプローチを行う」ためには、顧客データを適切に管理・分析する仕組みが不可欠です。
CRM(顧客関係管理)は、散在しがちな顧客情報を一元管理し、パーソナライズされたアプローチを実現するためのツールです。LTV向上施策を効率的に実現するための欠かせないパートナーです。OKKI CRM Smartは三つの点から顧客のLTV向上をサポートします。
顧客データの一元管理:顧客の基本情報、Webサイト上の行動履歴、顧客との対応履歴などを一つのデータベースに集約します。これにより、顧客一人ひとりの全体像を把握できます。また、顧客の過去の情報をを瞬時に確認できて、たらい回しを防ぎ、スムーズで質の高いサポートを提供できます。
パーソナライズアプローチの自動化:「最終購入日から3ヶ月経過した顧客に対応する」といったリマインダーを設定することで、マーケティング施策を自動化・効率化できます。
AIxビッグデータの機会創出:AI企業調査の機能を利用することで、「温度感の高い」顧客を識別し、成約確度を可視化。