企業の成長に不可欠なBtoBマーケティングでは、将来の顧客となりうる企業との接点を創出し、売上向上の起点となるのが「リード獲得」です。しかし、「何から手をつければ良いかわからない」「様々な施策があるが、自社に合うものが見つからない」といった悩みを抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リード獲得の基本的な定義から、具体的なオンライン・オフライン施策、そして施策を成功に導くための重要なポイントまでを網羅的に解説します。さらに、獲得したリードを成果に繋げるための育成プロセスや、AI・ビッグデータを活用した最先端のツールについても深掘りします。この記事を読めば、自社のBtoBマーケティング戦略を加速させるための具体的な道筋が見えるはずです。
目次
リード獲得とは?
リード獲得とは、自社の製品やサービスに興味を持つ可能性のある「見込み顧客(リード)」と接触し、企業名、担当者名、メールアドレスといった顧客情報を取得する一連のプロセスを指します。英語では「リードジェネレーション」とも呼ばれ、BtoBマーケティング活動における最初の重要なステップと位置づけられています。
リードとは、単なる連絡先リストではありません。それは将来のビジネスチャンスの種であり、企業の成長を支える貴重な資産です。
BtoBビジネスは、一般的に消費財と比べて検討期間が長く、購入決定に関わる人物も複数にわたることが多いため、一度接点を持った見込み顧客と継続的に関係を構築していくことが不可欠です。リード獲得は、その関係構築の出発点であり、その後の営業活動や商談創出の基盤を築くための極めて重要な活動なのです。
リード獲得の目的
リード獲得の目的は、単に連絡先を集めることだけではありません。その先にある事業成長を見据えた、複数の重要な目的が存在します。
新規顧客との接点創出と情報獲得
最大の目的は、これまで接点のなかった潜在的な顧客企業との最初の接点を持ち、その情報を「ハウスリスト」として蓄積することです。このリストがあることで、企業は初めて能動的なマーケティングや営業アプローチ(電話、メールなど)を開始できます。
将来的な売上の基盤構築
獲得したリードは、将来の売上を確保するための基盤となります。すぐに商談化しないリードであっても、後述する「リードナーチャリング(育成)」を通じて関係性を深化させることで、将来的に優良顧客へと転換する可能性を秘めています。
質の高い商談機会の創出
数あるリードの中から、特に購買意欲の高い「質の高いリード」を見つけ出し、営業部門に引き渡すことも重要な目的です。これにより、営業活動の効率が大幅に向上し、受注確度の高い商談にリソースを集中させることができます。BtoBマーケティングにおいては、リードの「量」だけでなく、最終的な売上に繋がる「質」が強く求められます。
リード獲得の施策・手法一覧
リード獲得施策は、オンラインとオフラインに大別されます。それぞれに特徴があり、自社のターゲットや目的に応じて戦略的に組み合わせることが成功の鍵となります。ここでは、主要な施策を一覧でご紹介します。
1.オンライン施策
オンライン施策は、地理的な制約なく広範囲にアプローチでき、効果測定がしやすいというメリットがあります。
施策名 | 概要 | メリット | デメリット・注意点 |
自然検索 (SEO) | 自社オウンドメディア(ブログ等)で有益なコンテンツを発信し、検索エンジンからの流入を狙う。 | ・コンテンツが資産となり、長期的な集客効果が期待できる ・広告費をかけずにリード獲得が可能 ・企業の専門性や信頼性を高められる | ・成果が出るまでに時間がかかる ・継続的なコンテンツ作成が必要 |
Web広告 | リスティング広告やディスプレイ広告を出稿し、ターゲット層を自社サイトやLPへ誘導する。 | ・短期間で成果が出やすい<br>・特定のターゲット層に絞ってアプローチ可能 ・リターゲティングで再アプローチできる | ・継続的な広告費用がかかる ・広告運用の専門知識が必要 |
SNS広告 | Facebook、X (旧Twitter)、LinkedIn等のSNSでリード獲得広告などを配信し、リード情報を直接取得する。 | ・詳細なターゲティングが可能 ・潜在層へのアプローチに強い ・プラットフォーム上でリード獲得が完結する機能もある | ・炎上リスクの管理が必要 ・プラットフォーム毎の特性理解が必要 |
メールマーケティング | 既存のリストや獲得したリードに対し、メルマガやステップメールを配信し、関係性を構築する。 | ・低コストで実施可能 ・リードナーチャリングに非常に効果的 ・顧客との継続的な接点を維持できる | ・リストがないと始められない ・開封率やクリック率の改善努力が必要 |
ホワイトペーパー | 専門的なノウハウや調査レポートを資料化し、ダウンロードと引き換えにリード情報を取得する。 | ・質の高いリードを獲得しやすい ・企業の専門性を示せる ・他の施策(広告、SEO)との連携が効果的 | ・質の高い資料を作成する手間とコストがかかる ・テーマ設定が重要 |
2.オフライン施策
オフライン施策は、直接的なコミュニケーションを通じて深い関係性を構築したり、デジタルではリーチしにくい層にアプローチしたりするのに有効です。
施策名 | 概要 | メリット | デメリット・注意点 |
セミナー/ウェビナー | 専門性の高いテーマでセミナーを開催し、参加者からリード情報を得る。オンライン(ウェビナー)も主流。 | ・一度に多くのリードを獲得できる ・参加者の熱量が高く、質の高いリードに繋がりやすい ・ウェビナーは低コストで広範囲にリーチ可能 | ・企画、集客、運営に工数がかかる ・登壇者の専門性が求められる |
展示会 | 業界関連の展示会に出展し、ブース来場者と名刺交換を行うことで大量のリードを獲得する。 | ・決裁権者と直接話せる可能性がある ・競合より早くターゲット企業と接点を持てる ・短期間で大量のリードを獲得可能 | ・出展費用や人件費が高額になりやすい ・事後のフォローアップが成否を分ける |
ダイレクトメール (DM) | ターゲット企業のリストに対し、郵送で資料や案内を送付する。 | ・物理的に手元に届くため、視認性が高い ・デザインの工夫で強い印象を残せる ・デジタル疲れの層に響く可能性がある | ・印刷・郵送コストがかかる ・効果測定がしにくい(QRコード等で工夫が必要) |
屋外広告/交通広告 | 駅や電車内、タクシー内などに広告を掲出し、ブランド認知度を高める。 | ・不特定多数への認知度向上に効果的 ・反復接触による刷り込み効果が期待できる | ・直接的なリード獲得には繋がりにくい ・費用が高額になる傾向がある |
リード獲得を成功させるためのポイント
効果的なリード獲得を実現するためには、やみくもに施策を打つのではなく、戦略的な視点を持つことが不可欠です。ここでは成功に不可欠な5つのポイントを解説します。
1.目的の明確化
まず「何のためにリードを獲得するのか」という目的を明確にすることが全ての始まりです。短期的な商談数を増やすためか、中長期的な顧客育成のためのリスト構築か、目的によって最適な施策や評価指標は異なります。目的が明確であれば、チーム全体の方向性が統一され、施策のブレがなくなります。
2.ペルソナの作成
誰に届けたいのかが明確でなければ、メッセージは誰にも響かない。自社の理想的な顧客像である「ペルソナ」を具体的に設定します。BtoBの場合、企業情報(業種、規模、課題)と担当者情報(部署、役職、決裁権の有無、情報収集の方法、悩み)の両面から詳細に描き出すことが重要です。ペルソナが明確になることで、コンテンツのテーマ、広告の媒体選定、アプローチの言葉遣いなど、あらゆるマーケティング活動の精度が格段に向上します。
3.カスタマージャーニーに沿ったコンテンツ
ペルソナが自社を認知し、興味を持ち、比較検討を経て購入に至るまでの道のり(カスタマージャーニー)を想定し、各段階で必要とされる情報(コンテンツ)を戦略的に提供します。例えば、認知段階では課題解決のヒントとなるブログ記事を、比較検討段階では詳細な機能や導入事例をまとめたホワイトペーパーを提供するなど、顧客の状況に合わせた情報提供がリード獲得と育成をスムーズにします。
4.CACとLTVの意識
施策の費用対効果を正しく評価するために、以下の2つの指標を意識することが重要です。
CAC (Customer Acquisition Cost / 顧客獲得単価): 1社の顧客を獲得するためにかかった総費用(マーケティング費用+営業費用)。
LTV (Life Time Value / 顧客生涯価値): 1社の顧客が取引期間中にもたらす総利益。
持続的な事業成長のためには、LTV > CAC の状態を維持する必要があります。各リード獲得施策の単価(CPL: Cost Per Lead)を追いかけるだけでなく、そのリードが将来どれだけのLTVを生み出すかという長期的視点で投資判断を行うことが求められます。
関連記事:CAC(顧客獲得単価)とは?定義や計算方法、LTVとの関係を基礎から解説
関連記事:LTV向上=売上アップ!マーケティングの視点から徹底解説
5.KPI設定とPDCAサイクル
最終目標(KGI: 例「年間受注額〇〇円」)から逆算して、具体的な行動指標(KPI)を設定します。
KPI設定の例: KGI: 受注数10件 → KPI: 商談化数50件 (商談化率20%) → KPI: 有効リード数250件 (有効リード率50%) → KPI: リード獲得数500件
設定したKPIを定期的に測定・評価し、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)のPDCAサイクルを回し続けることで、マーケティング活動は継続的に最適化され、成果が最大化されます。
リード獲得からもう一歩!見込み顧客育成の過程を見分ける
リード獲得はゴールではなく、スタートです。獲得したリードの多くは、すぐには購買意欲が高くない「潜在層」です。これらのリードを商談へと繋げるためには、「リードナーチャリング(見込み顧客育成)」というプロセスが不可欠です。
リードナーチャリングとは、獲得したリードに対して継続的に有益な情報を提供し、時間をかけて関係性を深め、購買意欲を高めていく活動です。
このプロセスでは、リードの状態を正しく見分けることが重要になります。その鍵となるのが、見込み顧客の行動(Webサイトの閲覧ページ、メールの開封、資料ダウンロードなど)や属性(企業規模、役職など)に基づいて点数を付け、購買意欲を数値化する「リードスコアリング」という手法です。スコアが高いリードは「ホットリード」として営業部門へ引き渡し、スコアが低いリードは引き続きマーケティング部門が育成するなど、状態に応じた最適なアプローチを判断するのに役立ちます。
AI×ビッグデータ:リード獲得に不可欠なツール
近年、リード獲得の世界でもAI(人工知能)とビッグデータの活用が急速に進んでいます。膨大なデータ分析と自動化により、マーケティング活動はより効率的かつ高精度になっています。
1.OKKI CRM:AIが海外BtoB取引を支援
アリババグループが提供する「OKKI CRM」は、AIとビッグデータを駆使して海外展開を目指す企業を支援するツールです。
AIによる潜在顧客の発掘: 1.8億社以上の海外企業情報や貿易データといったビッグデータをAIが分析し、自社に最適な見込み顧客を自動で発掘・レコメンドします。
マーケティングオートメーション: AIが顧客へのアプローチやコミュニケーションを最適化・自動化し、効率的なリード育成をサポートします。
2.AI企業調査:効率的なターゲット選定
「AI企業調査」は、従来人手で行っていた市場調査やターゲット企業のリストアップをAIが代替するアプローチです。企業のWebサイト、ニュースリリース、財務情報などをAIが自動で収集・分析し、自社のターゲット条件に合致する企業を瞬時にリストアップします。
これにより、営業やマーケティング担当者は、リスト作成の時間を大幅に削減し、より戦略的な活動に集中できます。
AIとビッグデータを活用したツールは、リードスコアリングの高度化、コンテンツのパーソナライズ、リード獲得広告の最適化など、リード獲得プロセスのあらゆる場面でその効果を発揮し、企業の競争力を高める不可欠な存在となりつつあります。